遺品整理・特殊清掃

賃貸で孤独死、残置物処分と原状回復の費用は誰が払うか

賃貸で親族が孤独死したとき、残置物の処分費や原状回復費を誰が負担するのか。国土交通省のモデル契約条項とガイドライン、連帯保証人の極度額、相続放棄前に避けたい行為と確認先をまとめました。

しまいごとノート編集部
家具が残されたままの賃貸住宅の一室と、机の上に置かれた賃貸借契約書
目次
  1. 最初に手元へ集める書類と連絡先
  2. 残置物の処分費用は、原則として相続人の側に回る
  3. 原状回復費用の線引きと、孤独死で増えやすい項目
  4. 連帯保証人が確認する極度額と保証の範囲
  5. 相続放棄を検討しているなら、部屋の物に手を付ける前に
  6. 撤去を頼む業者は、許可の種類で選ぶ
  7. まとめ

最初に手元へ集める書類と連絡先

賃貸住宅で亡くなっている親族が見つかった場合、警察の検視や検案が終わるまで部屋には入れません。その間に進められるのは書類の確認です。管理会社か家主に連絡し、賃貸借契約書の写しを受け取れるか聞いてください。

契約書で見る箇所は次の4つです。

  1. 連帯保証人の欄と、保証の上限額である「極度額」の記載
  2. 家賃保証会社を利用しているかどうか
  3. 残置物の処理を誰かに任せる条項や、別紙の委任契約があるか
  4. 敷金の額と、退去時の精算方法

連帯保証人と相続人が同じ人とは限りません。兄弟姉妹が保証人で、子が相続人という組み合わせもあります。誰がどの立場で連絡を受けているのかを、管理会社との最初の電話で整理しておくと、後から届く請求書の宛先で混乱しにくくなります。

残置物の処分費用は、原則として相続人の側に回る

借りていた人が亡くなっても、賃貸借契約は自動では終わりません。民法の規定により、借主としての地位も部屋に残った家財も相続人に引き継がれます。そのため家財の撤去費用や解約日までの家賃は、相続人に請求が来るのが通常の流れです。相続人が複数いれば、全員で引き継ぐ形になります。

例外になり得るのが、国土交通省と法務省が2021年6月に公表した「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を使った契約です。主に60歳以上の単身者の入居を想定したもので、借主が生前に推定相続人や居住支援法人、管理業者などを受任者に選び、死亡時の契約解除と残置物の処理を任せておきます。捨てずに渡してほしい物は「指定残置物」として送り先を決めておき、それ以外は受任者が一定期間を置いてから廃棄や換価をします。換価で得たお金は相続人に返す扱いです。

この条項は入居時に結んでいなければ使えません。契約書や別紙に委任の記載があれば、処分の段取りは受任者が進めます。相続人は、受任者が誰で、指定残置物に何が含まれているかを管理会社に確認してください。記載がなければ、通常の相続の問題として進みます。

原状回復費用の線引きと、孤独死で増えやすい項目

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、日焼けによる壁紙の変色や家具の設置跡といった経年劣化・通常損耗を貸主の負担、借主の故意や過失、手入れ不足による傷みを借主の負担と整理しています。入居年数が長いほど設備の価値は下がるため、借主の負担割合も小さくなります。ガイドラインでは、壁紙は6年で残存価値が1円まで下がる計算が例として示されています。

孤独死で問題になりやすいのは、発見が遅れて体液や臭いが床材や下地まで染みたケースです。病気による自然死を借主の落ち度と見るかどうか、特殊清掃や床の張り替えをどこまで相続人に求められるかは、状況によって判断が分かれます。管理会社から見積もりが届いたら、項目ごとに通常損耗か、それを超える損傷かを分けて説明してもらってください。

費用の項目目安負担の考え方
残置物の撤去・処分(1R〜1K)3万〜10万円前後家財は相続財産のため相続人側
特殊清掃・消臭数万〜数十万円通常損耗を超える部分として請求されやすい
床材・壁紙などの張り替え範囲により数十万円以上ガイドライン上は借主負担分のみ
解約日までの家賃契約上の月額契約終了まで発生し続ける

※2026年7月時点の目安です。最新の料金・制度は各社公式・自治体でご確認ください。

敷金は相続人に返る財産ですが、原状回復費や未払い家賃が差し引かれてから精算されます。家主が孤独死に備えた保険に加入していて、清掃費や家賃の損失の一部がそちらで賄われることもあります。保険の有無も管理会社に聞いておきましょう。

連帯保証人が確認する極度額と保証の範囲

2020年4月1日施行の改正民法で、個人が賃貸住宅の連帯保証人になる契約には、極度額を書面で定めることが必要になりました。この日以降に結ばれた保証契約に極度額の記載がなければ、保証契約の効力そのものが争点になります。施行前の保証契約は旧ルールのまま続いていることがあるため、賃貸借契約の日付だけでなく、保証契約をいつ結んだかを確かめてください。

改正民法には、借主が亡くなった時点で保証する元本が確定するという定めもあります。死亡後に発生した家賃や原状回復費がどこまで保証の対象に入るかは、契約の文言と事情によって変わります。請求を受けたら、支払う前に弁護士や法テラスで範囲を確認するのが確実です。

読者の疑問

兄の連帯保証人で相続人でもあります。相続放棄をすれば保証人としての請求も止まりますか。

しまいごとノート編集部

止まりません。相続放棄で手放せるのは相続人としての立場で、保証人として署名した契約は別に残ります。請求額が極度額の範囲内か、保証の対象期間に入るかを専門家と確認してください。

相続放棄を検討しているなら、部屋の物に手を付ける前に

相続放棄は、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。この期間中に亡くなった人の財産を処分すると、民法921条により相続を承認した(単純承認)とみなされ、放棄が認められなくなるおそれがあります。

先に確認すること

管理会社から早く部屋を空けてほしいと求められても、放棄を考えている段階で家財の売却や廃棄、遺品整理業者との契約、敷金の受け取り、故人の預金からの支払いをすると、財産の処分にあたると判断される可能性があります。明らかなごみの片付けや形見分けも線引きが難しいため、手を付ける前に弁護士か司法書士に相談してください。

2023年4月施行の改正民法では、相続放棄をした人が相続財産を現に占有しているときに限り、次に管理する人へ引き渡すまで保存する義務を負う形に整理されました。別居の親族が合鍵を持っているだけで占有にあたるかは個別の判断です。相続人全員が放棄した場合、家主は家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てて処理を進める方法があります。放棄の意向は管理会社にも早めに伝え、解約書類への署名は専門家に相談してから決めてください。

撤去を頼む業者は、許可の種類で選ぶ

相続すると決めて処分を進める段階になったら、家財の撤去業者を選びます。家庭から出る家財は一般廃棄物にあたり、回収して運ぶには市区町村の一般廃棄物処理業の許可が必要です。環境省は、許可のない回収業者による不法投棄や高額請求について注意を呼びかけています。遺品整理業者が自社で許可を持たず、許可業者に運搬を委託している形もあります。見積もりの段階で、実際に運ぶ業者の許可番号と、許可を出した自治体名を聞いてください。

特殊清掃が必要な部屋では、清掃と撤去を同じ業者に頼むか分けるかで総額が変わります。管理会社が指定業者を用意している場合もあるので、指定の有無と、相続人が自分で業者を選べるかを先に確かめます。見積もり後に追加料金を求められた、キャンセル料が高すぎるといった契約トラブルは、消費者ホットライン188から最寄りの消費生活センターに相談できます。国民生活センターも遺品整理サービスをめぐる相談事例を公表しています。

まとめ

孤独死のあとの費用は、賃貸借契約書の中身と、請求を受ける人の立場で行き先が変わります。最初に契約書で連帯保証人の極度額、保証会社の有無、残置物の委任条項、敷金の4点を確認し、管理会社と誰がどの立場かを整理します。

残置物の処分費は原則として相続人側に回りますが、モデル契約条項による委任があれば受任者が段取りを担います。原状回復費は国土交通省のガイドラインに沿って、通常損耗とそれを超える損傷に分けて見積もりの説明を求めてください。相続放棄を考えているなら、3か月の期限内は家財の売却や廃棄、敷金の受け取りを控え、家庭裁判所の手続きと並行して弁護士・司法書士・法テラスに相談します。撤去を頼むときは、市区町村の一般廃棄物処理業の許可を持つ業者かどうかを確かめます。

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この記事を書いた人

しまいごとノート編集部

費用相場・手続き・業者選びの下調べ担当

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