終活ガイド
終活とは何かとやることリストの全体像を6つの箱で整理する
終活を「これからの暮らしを整える作業」として捉え直し、やることリストを6つの箱に分けて全体像を示します。手をつける順番、物の整理と許可の注意、お墓と供養、始める時期までを整理しました。
目次
終活は、これからの暮らしを整える作業
終活という言葉には、人生の店じまいのような響きがあります。ただ、実際に手を動かすと、作業の中身は今日から先の生活に効くものばかりです。使っていない銀行口座を1つ閉じる。保険証券と年金の書類を1か所にまとめる。押し入れで20年動いていない家電を出す。どれも本人が元気なうちのほうが手続きは早く、選べる幅も残ります。
厚生労働省が毎年公表している簡易生命表では、平均寿命は男性が81年前後、女性が87年前後で推移しています。65歳で何かを始めるなら、その先にまだ15年から20年の生活が続く計算です。終活は死の準備ではなく、その年月を自分の意思で回していくための下ごしらえです。判断力と体力があるうちにしか選べないことが、リストの中にはかなり混ざっています。
やることを6つの箱に分ける
「終活 やることリスト」で検索すると、項目が数十個並んだ一覧が出てきます。上から順に潰そうとすると、たいてい3日で止まります。中身を6つの箱に分けて、箱ごとに取りかかる日を決めるほうが続きます。
| 箱 | 中身 | 目安 |
|---|---|---|
| お金と契約 | 銀行口座、保険、年金、証券、サブスク、借入 | 半日×2回 |
| 物 | 自宅の不用品、車、実家の荷物 | 数か月 |
| 住まい | 住み続けるか、住み替えるか、空き家をどうするか | 家族と数回 |
| 医療と介護 | 延命治療の希望、かかりつけ医、判断力が落ちたときの代理 | 半日 |
| デジタル | スマホの解除方法、ネット銀行、SNS、有料アプリ | 2時間 |
| 死後の手続き | 葬儀の希望、お墓、遺言書、名義変更の下準備 | 数回 |
最初に開ける箱はお金と契約をおすすめします。通帳、保険証券、年金の書類を集めて一覧にするだけで、家族が後から探し回る時間が大きく減るからです。口座が5つ以上ある人は、残高がほとんど動いていないものを閉じるところから始めると、その後の作業がずいぶん軽くなります。
順番は「動けなくなったとき先に困る」ものから
優先順位に迷ったら、自分の判断力が落ちたときに家族が詰まる場所を先に手当てします。認知症などで意思確認ができなくなると、家族であっても本人名義の預金を自由に動かすことは原則できません。施設の入居契約や自宅の売却も、本人の意思確認が前提になります。この段階に入ってから慌てて相談しても、選べる手段は減っています。
備えとしては、任意後見契約や家族信託、日常生活自立支援事業などがあります。任意後見契約は公証役場で公正証書として作成し、作成手数料は基本1万1,000円ほど、これに登記の嘱託手数料や印紙代が加わります。自筆で書いた遺言書を法務局に預ける自筆証書遺言書保管制度は、1通3,900円です。※2026年7月時点の目安です。最新の料金・制度は各社公式・自治体でご確認ください。
70代の親に終活の話を出すと「まだ早い」と不機嫌になります。どこから切り出せばいいですか。
全体像から話すと構えられます。「保険証券はどこにある?」「かかりつけ医はどこ?」のように、答えが1行で済む質問を1回につき1つだけ。健康診断の結果が届いた時期や、親戚の入院を聞いた直後は切り出しやすいタイミングです。

物の整理は、捨てる前に行き先を決める
物の箱は時間がかかります。まず家の中を「使っている」「保管する」「行き先を決める」の3つに分け、3つ目だけを処分の検討対象にします。自治体の粗大ごみ収集は1点あたり数百円から数千円の手数料が一般的で、清掃施設へ自分で持ち込めば重量制で受け付ける自治体もあります。分量が多いときは、業者に頼む前に自治体の料金を一度調べておくと判断しやすくなります。
業者を使う場合に確認したいのが許可です。家庭から出る不用品は一般廃棄物にあたり、その収集運搬には市区町村の一般廃棄物処理業の許可が必要です。環境省は無許可の回収業者を利用しないよう注意を呼びかけており、消費者庁や国民生活センターにも「無料と言われたのに積み込み後に高額を請求された」といった相談が寄せられています。トラックで巡回する回収や空き地での回収は、許可の有無がその場では確かめにくい形態です。迷ったら市区町村の廃棄物担当課に業者名を伝え、許可があるか確認できます。
相続放棄を検討している場合、故人の預貯金を引き出したり、価値のある遺品を売却・処分したりすると、相続を承認したものとみなされて放棄が認められなくなることがあります。借入や連帯保証の有無がはっきりするまでは、家庭裁判所や弁護士等に相談してから片付ける範囲を決めてください。
実家が遠方で年に2回しか帰れません。物の整理はいつ進めればいいですか。
1回の帰省で終わらせようとしないことです。1回目は各部屋をスマホで撮って、押し入れと物置の中身を目録にするところまで。処分の量が見えてから、2回目までに自治体の収集日や業者の見積もりを手配します。帰省中は本人と一緒に「残すもの」を決める時間に使うほうが、後で揉めにくくなります。
お墓と供養は、決める前に今の状態を確かめる
お墓の箱で最初にやるのは、現在の墓地の管理者、年間管理料、承継者が誰になっているかの確認です。管理料は寺院墓地や霊園によって幅がありますが、年数千円から2万円程度を毎年支払う形が多く、滞納が続くと契約上の使用権が取り消される場合があります。
移転を考えるなら手順が決まっています。改葬許可の申請先は、移転先ではなく現在お墓がある市区町村です。現在の墓地管理者が発行する埋葬証明書と、移転先の受入証明書を添えて申請するのが一般的な流れで、書式や必要書類は自治体ごとに異なります。永代供養墓や樹木葬、納骨堂は承継者を前提としない形式ですが、契約後に一定期間が過ぎると合祀に移る条件が付いていることがあるため、契約書のその部分は家族と一緒に読んでおくと安心です。散骨については、厚生労働省が2021年に事業者向けのガイドラインを公表しています。
始める時期と、途中で止めていい範囲
終活に締切はありません。ただ、期限のある手続きは存在します。相続放棄は自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内、生命保険の保険金請求権は保険法上3年で時効にかかるとされています。請求の流れや必要書類は生命保険文化センターが一般向けに解説しています。こうした期限がある項目ほど、書類の置き場所を家族が知っているかどうかで結果が変わります。
進め方は、1回90分、月2回くらいが現実的です。6つの箱のうち、お金と契約、医療と介護、デジタルの3つは半日ずつで形になります。残りの3つは年単位で付き合うものだと考えて構いません。エンディングノートは書き方が自由で気持ちも残せますが、法的な効力はありません。財産の分け方を確実に残したいなら遺言書が必要で、両方を役割で使い分けます。書いたものは年1回、誕生日や年末に見直します。口座も家族構成も、数年経てば変わります。
まとめ
終活のやることリストは、お金と契約、物、住まい、医療と介護、デジタル、死後の手続きの6つに分けると全体像がつかめます。最初の90分は、通帳と保険証券と年金の書類を1か所に集めるところから。不用品を業者に頼むなら市区町村の一般廃棄物処理業の許可を確認し、相続放棄を検討中なら価値のある遺品を動かす前に相談する。お墓を移すなら申請先は今お墓がある市区町村です。全部を終わらせる必要はありません。家族が困る順に、手が届くところから1つずつで十分です。
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