実家じまい・空き家

実家じまいのメリット・デメリットと決断のタイミング|存命中・施設入所・相続後

実家じまいをするか、いつ進めるかを費用・時間・家族関係・税制で整理しました。親の存命中、施設入所、相続後の3つのタイミングで変わる特例や手続きの違いを比べます。

しまいごとノート編集部
荷物が片付き始めた実家の居間と、窓から見える庭
目次
  1. 実家じまいのメリットとデメリット
  2. 費用・時間・家族関係・税制の4つの軸
  3. 親の存命中に進める場合
  4. 施設入所をきっかけにする場合
  5. 相続後に進める場合
  6. まとめ

実家じまいのメリットとデメリット

実家じまいとは、親がもう住んでいない実家や、この先住まなくなる実家の荷物を片付け、建物と土地を売る、解体する、貸すなどして区切りをつける作業です。するかしないかを決める前に、得られるものと引き受けるものを同じ表に並べます。

観点メリットデメリット
お金固定資産税、火災保険、光熱費の基本料金などの維持費がかからなくなる。売れば現金になる片付けや解体の費用が先にかかる。売却益には譲渡所得税がかかることがある
時間遠方への通い、草木の手入れ、郵便物の確認がなくなる片付けから引き渡しまで数か月以上かかる
家族誰が管理するのかが決まらない状態が解消する思い出のある家を手放すことについて、親やきょうだいと意見が分かれやすい
管理倒壊、雑草、不法投棄などの心配が減る手放した後は取り戻せず、帰省先もなくなる

持ち続けた場合の負担も比べる必要があります。2023年12月に改正空家等対策特別措置法が施行され、「管理不全空家」という区分ができました。市区町村の指導に従わず勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くしている住宅用地特例が外れることがあります。この特例では、200㎡以下の部分の課税標準が6分の1になっています。持ち続けるかどうかは、特例が外れたときの増税分も維持費に加えて考えます。

費用・時間・家族関係・税制の4つの軸

費用は、最初にかかるお金と、持ち続ける限り毎年かかるお金に分けて考えます。最初にかかるのは、家財の片付け、必要な場合の解体、売るときの仲介手数料や登記の費用です。仲介手数料には宅地建物取引業法で上限が決まっていて、売買価格が400万円を超える場合は「価格の3%+6万円」に消費税を加えた額が上限です。

家財の処分を業者に頼むとき、家庭から出るごみを収集・運搬するには市区町村の一般廃棄物処理業の許可が必要です。環境省は無許可の回収業者を利用しないよう呼びかけています。国民生活センターにも「無料回収」をうたう業者から高額な料金を請求されたという相談が寄せられています。業者が許可を持っているかは、自治体のホームページか窓口で確認できます。

時間は、親の体力、自分の家からの距離、荷物の量によって変わります。遠方から月に1〜2回帰省して仕分けるなら、1回で片付けられる量を部屋ごとに見積もり、帰省の回数から全体の期間を割り出します。

家族関係は、誰に決める権限があるかで整理します。親が存命なら、売るかどうかを決めるのは名義人である親本人です。子どもは提案し、手伝う立場になります。相続後は相続人全員で遺産の分け方を話し合うので、きょうだいが3人いれば3人全員が合意するまで売却は進みません。

税制では、売るのが親か相続人か、いつ売るかによって使える特例が変わります。

※2026年7月時点の目安です。最新の料金・制度は各社公式・自治体でご確認ください。

親の存命中に進める場合

親が元気なうちに進める良さは、何を残して何を手放すかを親本人に聞けることです。写真、手紙、仏壇の扱いのように、相続後には誰にも確かめられないことを本人と一緒に決められます。一方で、親が住み慣れた家を出ることが前提になります。次の住まいを先に決め、引っ越しと片付けを並行して進める負担があります。

親が自分の住んでいた家を売る場合は、国税庁が案内している「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使えることがあります。引っ越した後に売るなら、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の一つです。たとえば2026年5月に引っ越した場合、期限は2029年12月31日です。家を子どもに贈与して子どもが売ると、贈与税がかかる可能性があるうえ、その家に住んでいない子どもはこの特例を使えません。

読者の疑問

親が物忘れを気にし始めましたが、売るかどうかはもう少し先に決めても間に合いますか?

しまいごとノート編集部

認知症などで判断能力が十分でなくなると、親本人は売買契約を結べなくなります。その後に成年後見人が本人の住まいを売るには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。元気なうちに公正証書で任意後見契約を結んでおく方法があります。売るかどうかの意向も含めて、早めに家族で話し合っておくと選べる手段が増えます。

施設入所をきっかけにする場合

親が介護施設に入ると、実家が空く時期がはっきりするため、実家じまいを考え始めるきっかけになります。ただ、自宅に戻る見込みが少しでもあるうちは、手放すとは決めにくいものです。入所費用を払うために売却を急ぐ事情が重なることもあります。入所後の数か月は家を残して様子を見て、戻れるかどうかがはっきりしてから片付けに入る進め方もあります。

税制では、入所後にどうするかで使える特例が変わります。親本人が売る場合、前の項で触れた3,000万円控除の期限は、入所して住まなくなった日から数えます。売らないまま相続を迎えた場合も、国税庁は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」の対象に、要介護認定や要支援認定を受けて老人ホームなどに入っていたケースを一定の条件つきで含めています。条件には、入所の直前まで親が一人で住んでいたことや、入所後に家を人に貸したり、ほかの人が住んだりしていないことが含まれます。入所中に空いた実家を貸し出すと、相続後にこの特例を使えなくなります。貸すかどうかは、このことも踏まえて決めます。

認知症と診断されて入所した場合は、売る前に、前の項で触れた成年後見人の選任と家庭裁判所の許可の手続きが入ります。

相続後に進める場合

相続後は親の意向を直接聞けませんが、相続人同士で時間をかけて話し合えます。そのかわり、期限のある手続きがいくつも重なります。法務省の案内では、2024年4月1日から相続登記が義務になりました。不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。

売却では、国税庁が案内している空き家の3,000万円特別控除を使えるかどうかがまず問題になります。主な条件は次のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた家で、マンションなどの区分所有建物ではない
  • 相続の直前に親が一人で住んでいた
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
  • 売却代金が1億円以下である
  • 耐震基準を満たすようにリフォームして売るか、取り壊して土地を売る。2024年1月以降の売却では、売った翌年の2月15日までに買主が耐震改修や取り壊しをする場合も対象になる

相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除額は2,000万円です。この特例の対象は2027年12月31日までの売却です。相続税を納めた人が申告期限の翌日から3年以内に売ると、納めた相続税の一部を取得費に加えられる特例もあります。ただし空き家の特例とは同時に使えないので、どちらかを選びます。

先に確認すること

相続放棄をするなら、相続が始まったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。その前に実家の家財のうち価値のある物を売ったり処分したりすると、相続を承認したとみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。片付けは、放棄するかどうかを決めてから始めてください。

読者の疑問

兄は実家を残したい、私と妹は売りたいという場合、きょうだいの共有名義にして結論を先送りできますか?

しまいごとノート編集部

共有名義で登記することはできます。ただ、あとで売るときに共有者全員の同意が必要です。共有者が亡くなって代替わりすると人数が増え、話がまとまりにくくなります。お兄さんが実家を相続し、ほかの相続人にお金を払う代償分割という方法もあります。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停を使えます。

まとめ

タイミング決める人税制で確認すること注意する手続き
親の存命中名義人である親本人居住用財産の3,000万円控除。住まなくなってから3年後の年末までに売る判断能力があるうちに意向を確認する
施設入所親本人。判断能力が不十分なら成年後見人本人が売るなら上と同じ控除。相続後に空き家特例を使えるかは入所中の家の使い方で決まる成年後見人が売るには家庭裁判所の許可が必要
相続後相続人全員空き家の3,000万円控除か、相続税の取得費加算の特例相続登記は3年以内、相続放棄は3か月以内

実家じまいをするかどうかは、まず持ち続けた場合の毎年の維持費と管理の手間を、片付けや売却にかかる費用と比べて考えます。そのうえで、親が元気なうちに意向を聞いて進めるのか、入所をきっかけにするのか、相続後に相続人で決めるのかによって、使える特例と期限が変わります。税金の試算は税務署や税理士、登記は法務局、家財の処分は自治体の案内で確認しながら進めてください。

実家じまい空き家相続施設入所3,000万円特別控除相続登記
この記事を書いた人

しまいごとノート編集部

費用相場・手続き・業者選びの下調べ担当

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